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​東京外国語大学で学ぶ外国人留学生の現状

東外大で学ぶ多様な類型の留学生の現状 

​                           (2023年6月20日 更新)

       

  在籍留学生の人数、類型、推移

 ポストコロナ期に入った現在、東京外国語大学で一体どんな種類の留学生が何人学んでいるのか。それを示したのが下表です。

 留学生総数は687名。コロナの影響で留学生数が大きく落ち込んだ2021年、22年よりも100名近く増加しました。その最大の要因は、コロナ感染発生と共に激減していた交換留学生(ISEP生)が100名近く増加したことです。交換学生に関しては、コロナ以前の2019年の水準まで回復したといえます。

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 留学生総数はコロナ初年度の2020年度が16%、21年度が11%と連続して減少しましたが、22年度は前年と同数で底をつきました。そして今年度は16%増と確実に回復傾向にあります。とはいえ、2019年よりも100名以上低い水準にとどまっています。その最大の要因は研究生が19年と比較して84名も減少していることです。研究生の数は特に21年に激減し、その後も微減傾向です。

 ここで注意したいのは、ひとくちに研究生といっても国費生と私費生とで決定的な相違が見られることです。下の補足資料を含めて5年間の研究生数を比較すると、国費研究生数はほぼ20名台を維持しているのに対し、私費研究生数が大幅に減少してきたことがわかります。その理由は、私費研究生の入学に際して英語能力証明書の提出が必須となり、ハードルが一挙に引き上げられたことにあります。

 要するに、研究留学生の大幅減少はコロナ禍の影響ではなく、したがってポストコロナ期になったから回復するとは言えないのです。その意味で687、つまり約700人という数値が、ポストコロナ期の東外大留学生数の基準値だといえるでしょう。 

 補足資料1 2019~22年度の留学生数

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学生数を考察する際の注意点

 以上、コロナ期をはさんでの留学生数の推移を簡単に見てきましたが、この数値を評価する際に注意すべきことを3点あげておきます。

 第1は、ここでいう留学生数とはあくまでも東外大在籍者の人数だということです。2020年、21年の在籍者のなかには、入学したが来日できないでいる学生、一時帰国して戻ら(れ)ないでいる学生もかなり存在しました。掲載した資料の数値には、このように日本での留学生活が出来ずにオンライン授業を受講していた留学生が相当数含まれています。

 第2は、ここでいう留学生数とは当該年5月1日現在の在籍者数だということです。正規生の場合には、年度内の人数変化はごく少数です。けれども交換留学生数の場合は4月と10月の2回入学します。海外の大学で学年度が秋に開始する例が多い関係上、むしろ10月入学者の方が多数なのですが、この人数は当該年の在籍者に加算されません。

 詳しく言うと、交換留学生には1年間と半年間の2コースがあります。だから、10月入学者のうち1年コースの学生は、次年度の5月1日在籍者数に計上されます。けれども半年コースの学生の場合は、当該年度にも次年度にも計上されず、上記の留学生数統計上は存在しないことになります。逆にこの数値を補って考えれば、2023年度の留学生数は750名をこえるかもしれません。

 第3は、「その他」の留学生の扱いです。東外大には正規生、研究生、交換留学生以外に主に文部科学省の特別プログラムによって選抜された多様なコースの留学生が100名ほど在籍します。上記の表では、そのうち「日本語、日本文化研修生」だけを「その他に」計上しています。それ以外のコースの学生も加えれば、2023年度留学生数は800名以上になるでしょう。

 

 留学生の類型

  ここで、上で言及した「その他」の留学生を含め、東外大に在籍する留学生の類型を簡単に説明しておきます。

 正規生とは、世間で「大学生」(あるいは「大学院生」)というときに考えられている学生です。入学試験に合格して入学し、学部だと4年間、大学院だと前期2年間、後期3年間以上、定められた科目や課題を履修、完了し、学士、修士、博士などの学位取得を目指す長期間の留学生です。自国の学校を卒業、修了して、すぐに日本の入学試験に合格できる学生はむしろ少数派です。多くの場合は日本の日本語学校で、あるいは大学の研究生(後述)として数年間の準備段階の留学期間を経験した後に正規生となります。入学には基本的に高い日本語力が必要(近年J3という日本語力を要求しないコースも作られていますが)なこともあり、東アジアの漢字文化圏出身者が大部分を占めています。

 学部生より大学院生が多いのも特徴です。文系の日本人学生の大学院進学者は少数なので、東外大でも大学院生のほぼ半数は留学生が占めています。博士後期在籍者のなかには日本留学生活10年間以上になり、日本の社会、文化を熟知した学生も珍しくありません。

 研究生とは、既に大学あるいは大学院を卒業,修了したうえで、特定のテーマを深めるために指導教員の下で1年間の学習、研究を行う仕組みです。単位取得や卒業資格はありません。学部課程が大部分という特徴がありますが、それは大卒者が大学院進学の準備期間として在籍するケースが多いからです。1年で目的を達成できなかった場合は、1年間延長することができます。2年間在籍する例は少なくありません。

 交換留学生とは、単位互換や授業料免除を含む学生交流に関する協定・合意を結んでいる外国の大学等(現在66か国180機関)の学生を、本学学生の留学派遣と交換のかたちで半年~1年間受け入れるものです。そのために特別に組織された、英語で受講できる「国際教育プログラム(ISEP)」を履修しているのでISEP生とも呼ばれます。出身国が多様であり、大学2~3年生段階の比較的若い学生が多いのが特徴です。日本語能力は過半が初級以下です。

 交換留学生は4月、10月と年2回やってきます。ですから2023年度の211名は、2022年度の10月から1年間滞在している学生と23年度4月に新規来日した学生の合計です。このうち22年度10月入学者と23年度4月に入学した半年間の学生は7,8月に帰国して自国の大学に戻り、代わって23年度の10月入学者がやってきます。

 「その他」とされているのは、日本政府(文部科学省)奨学金留学生のうち「日本語・日本文化研修留学生」で、秋学期から1年間の留学生です。上述の協定大学で日本語、日本学を専攻している学生が多く、日本語力は高いです。

 実は、日本政府奨学金制度により文部科学省によって特別に選考された留学生には、「国費学部留学生」(毎年60名前後)、「国費研究留学生」(毎年20~30名)、「国費教員研修留学生」(毎年数名)もいます。これらの学生は、本学の留学生日本語教育センター(JLC)で学んでいるので、上記の留学生数には含まれていません。

 

 とはいえ、これらの学生も東京外国語大学で学ぶ留学生なので、それを加えると2019年度の留学生は900名ほどであり、23年度は実は800名以上になります。さらに超短期の語学、体験プログラムなどで学ぶ外国人学生もいます。

 このように多様な外国人留学生が学んでいるわけですが、政府や大学の留学生支援策には正規生に重点が置かれる傾向があります。正規留学生に対し日本人正規学生と同等の条件を保証することに注力するのは、制度的には当然のことかもしれません。けれどもその反面で、非正規生である研究生や交換留学生が公的な支援策の対象外となるのは残念なことです。私たち支援の会では、あらゆる種類の留学生に対するわけへだてのない支援をこころがけていきたいと思います。

留学生の出身国・地域の構成とその変化

 

 下の表は、支援の会が発足してからの四半世紀における、留学生の出身国・地域の構成とその変化の特徴を見るために、2023年度、コロナ禍前年の2019年度、支援の会が発足した1999年度の在籍留学生の出身国・地域の構成の上位10を示したものです(10位が複数ある2023年度、1999年度は9位までとしました)。

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 3つの表からまず確認できる特徴は、地理的、歴史的、文化的に最も近い隣国である中国、韓国からの留学生の比率が群を抜いて多数を占める構造(これは明治期に外国人留学生受入れを開始して以来の特徴です)が現在に至るまで一貫しているという事実、と同時にその寡占状態はこの四半世紀の間に8割近くから4割弱へと半減し、21世紀になって出身国・地域の多様化傾向が進んでいる事実です。

それを確認したうえで注目すべき変化を箇条書きしてみます。

​ (1)構成比率が大きく減少した中国、韓国を比較してみると、1999年度からの減少率は韓国の方が大きいです。人数の変化に着目すると、韓国はコロナ期前までに減少し、コロナ期間中は横ばいあるいはむしろ微増傾向にあるのに対し、中国はコロナ期前までは増加していたのが、コロナ期間中に100名以上減少していることがわかります。このようにコロナ禍の影響という点で、中国と韓国は対照的です。この表にある他の国と比較しても、コロナ期における中国の留学生数の減少は突出しています。

 (2)1999年段階までは中国、韓国に次いで第3位を占めていた台湾の留学生は、徐々に減少し2023年には上位9国から姿を消しました。タイ、マレーシアなど東南アジア諸国の比率も低下傾向にあります。

 (3)それに反比例するかたちでヨーロッパ諸国からの留学生の比率が増加しています。その大半は交換留学生であり、交換留学生制度が出身国・地域の多様化をもたらしていることを示しています。

 

 出身国・地域と所属区分の関係
 留学生の出身国・地域の推移とその特徴をみてきましたが、ここでは出身国と所属課程の関係について考察してみます。
 東外大には現在81か国・地域から687名の留学生が在籍しています。下の表は、それを特に人数の多い中国、韓国の2国、それ以外のアジア、中東、大洋州、アフリカ、ユーロッパ、旧ソ連、南北アメリカの7地方に区分して、留学生数とその所属課程の内訳ならびに国費留学生の内訳を示したものです。内訳は実数ではなく構成比をパーセントで表示しました。

国別所属構成.jpg

 この表をみてすぐわかるのは、正規生と非正規生の割合に関して、中国、韓国とその他の地域との間に非常に大きな相違があることです。 正規生の比率は中国が85%、韓国が88%と、きわめて高いことがわかります。その反面で非正規生、とくに交換留学生(ISEP生)は両国とも10%程度と最低水準です。大部分が正規留学生であり、ISEP生が極端に少ないこと、これが中国と韓国の留学生の所属構成の特徴です。 

 これと正反対なのがヨーロッパの留学生で、ISEP生が72%と大多数を占める一方で、正規生は23%と他地域と比して最低です。 正規生中心の中国、韓国とISEP生中心のヨーロッパのコントラストは、国、地域の間には留学生数だけでなく留学の形態、期間にも大きな相違が存在することを如実に示しています。 

 ここで注目したいのが、留学生数が多く、かつ大部分が正規生という点では共通する中国と韓国の間に、前者は大部分が大学院生であるのに対し後者は大部分が学部生という興味深い相違が見られることです。韓国人の場合、自国の高校を卒業して東外大の学部に入学し、卒業後は大学院に進学しないで就職という傾向がありそうです。中国人の場合、東外大の学部から大学院進学する学生は少数であり、多くは自国の大学を卒業してから東外大に入学しているようです。 最初からこうだったわけではありません。2005年頃までは中国、韓国とも学部、大学院ほぼ半々でした。その後中国では大学院、韓国では学部の比率が増え始め、さらに差が拡大して現在のような状態になりました。この20年余りの間に両国の間でこのような対照的な変化が進行した事実は、既述したコロナ禍による留学生数減少の有無とともに、興味深い現象です。

支援の会設立以降の外語大留学生数の推移

 現在の687名という留学生数の意味を理解するため、本会が結成された1999年度以降の留学生数の推移を簡単に見てみます。

 下の補足資料2の表は1999年度の留学生数を示します。それを20年後、コロナ直前の2019年度の表と比較すると、①正規生が1.6倍近くに増加したこと(特に大学院生が増加)、②私費研究生が1割以下にまで激減したこと、③交換留学生(短期等)が6倍以上と飛躍的に増加したことがわかります。その結果、留学生総数も増加して1.6倍以上になりました。

  20年間ほどの間に1.6倍といっても、その変化はなだらかな増加曲線ではありませんでした。下のグラフが示すように、1999年からの10年間余は500人前後で増減を反復し、2011年になっても1999年とほぼ同水準でした。それが2012年以降は順調な増加に転じ、毎年過去最高を更新して2019年には796名に達しました。ところがコロナ禍によって一気に急減したのち、今年度は増加に転じたわけです。

      補足資料2 1999年度留学生数

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