International Student Support Association of Tokyo University of Foreign Studies
東京外国語大学で学ぶ外国人留学生の現状
外語大で学ぶ留学生 その1
多様な類型の留学生の現状
コロナ禍3年目となった現在、東京外国語大学で一体どんな種類の留学生が何人外語大で学んでいるのか。それを示したのが下表です。
在籍留学生の総数は591名で、コロナ前の2019年度の796名から25%も減少しており、渡航制限などの影響が如実にみられます。減少率はコロナ初年度の20年度が最大で16%、21年度が11%でしたが、22年度は前年度と同数であり、コロナによる減少は底をついたように思われます。
注意したいのは、コロナ禍での在籍者のなかには、入学したが来日できないでいる学生、一時帰国で出国して戻れないでいる学生も含まれることです。
25%の減少といっても、正規生は3年間を通じてさほど変化していないのに対し、交換留学生はコロナ感染拡大と共に一挙に半分近くまで激減し、現在までその状態が続いています。このように、留学生の区分によって大きな相違のあることがわかります。その最大の理由は、留学期間の長短の相違です。正規生は複数年度にわたる長期の留学なので前年度からの継続在籍者が大部分であり、新入生の場合も入学を辞退せずに自国で1年~2年間のオンライン授業で必要単位を取得し、渡日を待つという
対応が多かったので減少しなかった。他方、交換留学生の場合は半年~1年と比較的短期なので渡航制限による新規来日数の減少が、そのまま在籍者数の減少につながったわけです。
表を参照しながら、どのような種類の留学生が東外大で学んでいるのかを簡単に説明しておきます。
正規生とは、世間で「大学生」(あるいは「大学院生」)というときに考えられている学生です。入学試験に合格して入学し、学部だと4年間、大学院だと前期2年間、後期3年間以上、定められた科目や課題を履修、完了し、学士、修士、博士などの学位取得を目指す長期間の留学生です。自国の学校を卒業、終了して、すぐに日本の入学試験に合格できる学生は少数です。多くの場合は日本の日本語学校で、あるいは大学の研究生(後述)として数年間の準備段階の留学期間を経て正規生となります。
大学院生が多いのも特徴ですが、博士後期在籍者のなかには日本留学生活10年間以上になる学生も珍しくありません。入学には高い日本語力が必要なので、東アジアの漢字文化圏出身者が大部分を占めています。
研究生とは、既に大学あるいは大学院を卒業,修了したうえで、特定のテーマを深めるために指導教員の下で1年間の学習、研究を行う仕組みです。単位取得や卒業資格はありません。学部課程が大部分という特徴がありますが、それは大卒者が大学院進学の準備期間として在籍するケースがほとんどだからです。1年で目的を達成できなかった場合は、1年間延長することができます。実際2年間在籍する例が多いようです。研究生も日本語能力が前提されるため、漢字文化圏出身者が大部分を占めます。
交換留学生とは、単位互換や授業料免除を含む学生交流に関する協定・合意を結んでいる外国の大学等(現在66か国180機関)の学生を、本学学生の留学派遣と交換のかたちで半年~1年間受け入れるものです。そのために特別に組織された、英語で受講できる「国際教育プログラム(ISEP)」を履修しているのでISEP生とも呼ばれます。出身国が多様であり、大学2~3年生段階の比較的若い学生が多いのが特徴です。日本語能力は過半が初級以下です。
交換留学生は4月、10月と年2回やってきます。ですから表の128名は、2021年度の10月から1年間滞在している学生と22年度4月に新規来日した学生の合計です。このうち21年度10月入学者と22年度4月に入学した半年間の学生は7,8月に帰国して自国の大学に戻り、代わって22年度の10月入学者がやってきます。
表で「その他」とされているのは、日本政府(文部科学省)奨学金留学生のうち「日本語・日本文化研修留学生」で、秋学期から1年間の留学生です。上述の協定大学で日本語、日本学を専攻している学生が多く、日本語力は高いです。
実は、日本政府奨学金制度により文部科学省によって特別に選考された留学生には、「国費学部留学生」(毎年60名前後)、「国費研究留学生」(毎年20~30名)、「国費教員研修留学生」(毎年数名)もいます。これらの学生は、本学の留学生日本語教育センター(JLC)で学んでいるので、上記の表には含まれていません。
とはいえ、これらの学生も東京外国語大学で学ぶ留学生なので、それを加えると2019年度の留学生数は実は900名近かったことになります。さらに超短期の語学、体験プログラムなどで学ぶ外国人学生もいます。
このように多様な外国人留学生が学んでいるわけですが、政府や大学の留学生支援策には正規生に重点が置かれる傾向があります。正規留学生に対し日本人正規学生と同等の条件を保証することに注力するのは、制度的には当然のことかもしれません。けれどもその反面で、非正規生である研究生や交換留学生が公的な支援策の対象外となるのは残念なことです。私たち支援の会では、あらゆる種類の留学生に対するわけへだてのない支援をこころがけていきたいと思います。


